■ 注染について


手ぬぐいや浴衣を染める技法のひとつ。

注染は、明治後期に発明された日本独自の染め方で、世界でも類を見ない独特の技術だそうです。明治時代に、浴衣や手ぬぐいの需要が増え、それまでの絞りや型染では生産が追いつかず、“一気に大量に染められる技術”として普及しました。


簡単に染め方の説明を試みます。

手ぬぐいの大きさの型紙を木枠に張り、反物状の晒に型紙を置き、上から防染糊を木へらでのばします。型紙の木枠を上げ、反物を屏風状に畳み、再び型紙の上から防染糊を同じ位置に置き、木枠を上げ反物を畳み防染糊を置き....、という繰り返しで、一枚ずつ防染糊を置いていった反物が手ぬぐいの大きさに畳まれた状態で出来上がります。この上から、じょうろで染料を注ぎ、下からポンプで減圧し、一気に染料を布に染み込ませます。水洗いして糊を落とし、天日で乾かします。


というわけで、注染という染め方は、型紙を手彫りしたり、一枚ずつ防染糊を置いていったり、職人の匠の技と息遣いがにじみ出る“人間っぽい”技術です。そして、「量産が出来る手仕事」という点が、実に日本っぽい技術でもあります。

最近私は、手ぬぐいにカスレなどを発見すると、当たりくじを引いたような嬉しい気分になります。また、注染で染めた布は、染料が布の繊維に染み込んでいますので、顔料を布の表面にこすりつけているプリント物とは違い、使っているうちに柔らかくなり布が育ってくる感じが分かります。徐々に色が抜けてくるのもまた楽しいのです。

デザイン的には、プリント物の様な細かい線や柄は注染では染められませんが、様々な制約を考慮して出来上がった柄は、注染らしい味があります。


手ぬぐいや浴衣などを選ぶ際、これからはデザインだけでなく、染め方や布のクォリティにも気を配ってみてください。きっと長く使える物に出会えるはずです。